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「さてと、では私が手に入れた情報はですね、まず一瀬先輩に彼氏さんはいません。あと好きな人も恐らくいません」
華菜が得意気に仕入れた情報を話していた。
修平は情報の内容に関心を寄せていたが、それと同時に華菜に対する尊敬の念も肥大して行く。
自分で頼んでおいてなんだが、大して交流もないような関係から、こんな短期間で頼んだ情報を手に入れて来てくれた華菜に修平は感謝の意を素直に伝えた。
「いや、そんな、それほどでも……」
そう言って華菜は、はにかんだ笑顔を見せながら下を向き謙遜していた。
「先輩。それと告白するなら花火大会の日がいいかもしれませよ。その方がほら、ロマンチックだし」
「確かにそうかもな……」
そう言った後、修平は押し黙って考え込んでしまった。
華菜の言う事はわかるのだが、どうやって呼び出し想いを伝えればいいのか?
良案が浮かんで来ないのだった。
「何か名案はないかな?」
少し困った様な笑顔をして修平が華菜に問いかけていた。
「少しは自分で考えて下さい。もう私は自分の役目は果たしました」
華菜は眉根を寄せて呆れた様な笑顔を浮かべていた。
「はは、まぁそうだよな。ごめん、そろそろ送って行くよ」
そう言って修平は立ち上がり、ベンチに座る華菜に笑顔で手を差し出す。
華菜も差し出された修平の手を取り、立ち上がって2人並んで帰路についた。
花火大会まであと3日となった学校からの帰り道、修平が1人歩いていると後ろから突然声をかけられた。
「先輩」
振り返るとそこには華菜が後ろ手に組んで少し覗き込むように立っていた。
「今、なんか残念そうな顔しませんでした?流石にショック受けますよ」
少し曇った表情を見せ、手で顔を覆って見せる華菜。
「いや、そんな事ないって。だいたい俺の事『先輩』って呼んでくるのお前しかいないんだから声かけられた瞬間に華菜ってわかるだろ」
慌てて弁明する修平を見て、華菜は楽しそうに笑っていた。
「知らない人が見たら可愛い女の子を泣かす悪い男に見られますね。それはそうと報酬のご飯、そろそろ連れて行ってくれてもいいんじゃないですか?バイトのお給料も入ったでしょ?」
「あ、そうだったな。何時がいい?」
修平が慌てて問いかけると華菜がすぐに答える。
「え?今忘れてませんでした?出来れば今日がいいんですけど。今日、親がいないんですよ。だから1人で晩御飯食べなきゃいけなくて……なので先輩が今日連れて行ってくれたら助かるんですけど」
華菜が上目遣いで覗き込んでくるので思わず修平は目を逸らしてしまう。
「そっか。わかった。じゃあ今日にしよう」
「本当ですか?じゃあ駅前の自販機前に18時に集合で。ついでに花火大会の作戦会議もしましょうか」
そう言って華菜は嬉しそうに駆け出して行った。
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