想いよ届け

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想いよ届け

 花火大会当日。  いつもは人もまばらな河川敷を浴衣姿で行き交う人々、辺りを覆う鉄板焼きの匂い。  それらお祭りの華やかな喧騒を抜け、修平は1人河川敷の外れにある大きな桜の木を目指していた。  お祭りの騒がしさからは離れ、ここなら人目につかない。そこを修平は告白の場所に選んだ。  修平がそこに着き、暫くすると一瀬も1人でやって来た。 「あ、あの……一瀬さんすいません。こんな時に呼び出しちゃって……」  修平は慌てて駆け寄り、声をかけるが鼓動も高まり上手く言葉が出て来なかった。  一瀬は立ち止まり優しく微笑む。  修平は1年前の写生大会の時に偶然横になった時からずっと好きだった事等を振り絞る様に、想いの丈を存分にぶつけた。 「――ずっと1年前から好きでした」  一瀬の顔を見る事も出来ず、修平は目を瞑り下を向いていた。 「そっか。……あの時から想っててくれたんだ。ありがとう」  そう言って一瀬が修平に歩み寄る。  1年分の想いを吐き出した満足感にも似た疲労と、これから訪れるその結果の緊張感から修平の胸は張り裂けそうだった。  修平からしてみれば、この僅かな沈黙の時間が数分にも感じられた。  だが実際には僅か数秒ばかりの沈黙の後、一瀬が口を開いた。 「……でもごめんなさい。私には貴方の想いを受け止める事は出来ないの。本当にごめんなさい」  ずっと下を向いている修平を見つめ、一瀬が踵を返してその場を後にしようとする。 「……一瀬さん!!」  修平は顔を上げ、去り行く一瀬を呼び止める様に声をかけた。  慌てて振り返る一瀬に対して修平は今日の事を詫びて、そして礼を伝える。 「今日はこんなお祭りの時に時間を取らせてごめんね。気持ち伝えられてよかったよ。ありがとう。俺の事はもう気にしないで……」  そう言って修平は再び下を向いた。  涙が溢れ、グシャグシャになった泣き顔を隠す様に。  
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