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町の寂れた路地裏にひっそりとその社はあった。錆びついた鳥居の先にある小さなお社。そこにウタはいる。
「もうすぐかな」
コソコソと表通りを伺いながら持ち前の狐尾を振る。同じく耳は狐のケモ耳で、狐尾の方は普段は邪魔になるので隠しているが、隠すことにも力を使うため神様のお勤めが始まるまでは出したままにしている。
こっそりと通りを覗いていると、遠くから歩いてくる男の姿を見つけた。それはまさしく、ウタが待ち焦がれていた姿だった。
近くの大学に通う大学生のその彼の名は黒尾葵、年は十九。月曜日のこの時間は大学の授業があるのかこの道を通る。火曜日はもう少し遅い時間で、水曜は・・・・・・。ウタは彼がこの道を通るスケジュールを把握している。
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