17/20
前へ
/161ページ
次へ
 翔と姉の二人が参拝を済ませ、葵に笑顔で手を振りながら帰るのを見送る。葵も、初めて参拝しようと拝殿に向かった。  五円玉を投げ入れ、二拝二拍手をし、心の中で祈る。 『ウタ。これまで、冷たくあしらうばかりでごめん。一度もこうしてお詣りもしないままでごめん。ちゃんと会って謝りたい。そして、お礼を言いたい。だから、どうか、ウタが元気になりますように』  その願いは、叶えられるのだろうか。神自身の健康を祈るなんて。おかしな話だと思いながら目を開け、もう一度一拝する。 「こんにちは」  ふと、声をかけられ振り返ると、年上の女性が立っていた。邪魔になっているのか、と会釈をしながら階段を降りる。入れ違いにその女性は拝殿に向かい、葵と同じように作法通りお祈りを始めた。  暫くして、顔を上げた女性が降りてくると、にこやかに葵に笑いかける。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

271人が本棚に入れています
本棚に追加