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 目を覚ましてから、葵の様子が変わった。ウタを、“ウタ”と呼ぶようになったり、ウタを見る眼差しが暖かだったり。 「おはよう」 「あ、おはよう、葵くん」 「いっつもそこにいるのな」  鳥居のそばで通路を眺めながら葵が来るのを待っていたウタに、葵は微笑みながら言った。  あの日から、こうして時折笑ってくれるようにもなった。  なにか、葵の中で心境の変化があったのだろうか。祖父が亡くなり、悲しみの中にいると思っていた葵だが、少しスッキリしたような様子も見られる。  不思議に思うウタだが、それでも、葵が前向きになれたのならよかったと思う。 「そろそろ葵くんがくる頃だと思って」 「ああ、そう。身体の調子は」 「え、あ。元気だよ! 葵くんのおかげだね」
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