4/12
前へ
/161ページ
次へ
 葵は毎日のように神社に足を踏み入れ、ウタに声をかけた。表情も以前とは比べ物にならないほど柔らかで優しい。  今日もまたやってきた葵を出迎えようと駆け出したウタは、足をもつれさせた。 「わっ」 「あぶな」  慌てた様子で受け止めてくれた葵と距離が近づく。葵の腕の中で顔を上げると、ホッとしたような顔の葵と目があった。 「なんで・・・・・・」 「葵くん・・・・・・?」 「なんで俺、ずっと頑なになってたんだろうな」 「え・・・・・・」  葵の顔が近づく。いつもと違う葵の表情に身を固めていると、葵の手が頬に触れる。  そして、柔らかな唇が、重なった。  暫く触れ合うだけで離れていった唇に、ウタは戸惑う。一体、何が起きたのか。 「ぅえ?」 「ふっ、なんだよそれ」 「え、だ、って。え、なに」  その行為が一体どういったものなのか、神であるウタには話し程度にしか聞いたことはないし、自身での経験はもちろんあるわけもない。  でもそれは、確か、想い合う者同士が行う行為だ。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

271人が本棚に入れています
本棚に追加