269人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
ウタが目を覚ますと、そこは拝殿の中だった。
「あれ・・・・・・、ぼく・・・・・・」
「ウタさまっ!」
「ウタさま」
心配そうな顔が二つ覗く。ミトはポロポロと涙を流していた。ヤトも不安そうな顔をしている。心配をかけてしまったようだった。
「ごめんね・・・・・・」
「ウタさまのばか! 無茶苦茶すぎます! 力使った後に、あんな・・・・・・」
「うん・・・・・・」
ミトが泣きながら叫ぶ。我ながら無茶をしたと思う。でも、どうしても言葉を交わしたかったのだ。彼の目に映りたかったのだ。
「どうして、あんなにあの人間に拘るのですか」
「そうですよ。あの人間、せっかくウタさまが話しかけたのに、あんな冷たい態度」
「葵くんは、本当はもっと優しい人なんだよ」
そう。彼はもっと優しく柔らかに笑う子だった。
最初のコメントを投稿しよう!