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「それでなんて答えた」 「か、考えといてって」 「今度、そういうこといわれたらはっきり断れよ」 「え、う、うん」  なんだか、葵が別人みたいだ。いや、正確に言えば、昔の葵みたいだ。子どもの頃にはない甘さも含まれているが。そんな葵に、ウタは戸惑う。 「なぁ、耳出して」 「み、耳?」 「触ってみたかったんだよ」  そう言われ、ウタは戸惑いながらも姿を戻す。今でも時々不安になる。この姿になって葵の目に映らなかったらと。少し前まで見えなかった葵だから、いつまた見えなくなるか、そう思うとこの姿に戻るのは少し不安になる。 「触っていい?」 「う、うん」  頷くと、葵の手が耳に伸びる。ふに、と揉むように触れるとくすぐったさに肩を竦ませる。
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