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「なぁ、俺とウタって子どもの頃も会ったことある?」 「え・・・・・・」  少し落ち着いてまったりとした時間になった頃、ふと思いついたように葵が問う。 「いや・・・・・・、じいちゃんのことがあって、・・・・・・一人になってさ、昔のこと色々考えてたんだけど、なんとなく思い出したことがあって」 「・・・・・・思い出したこと?」 「じいちゃんちに夏休みに行く度に同い年くらいの子どもと、遊んでた記憶。朧げだけど、お前に似てる気がして」 「うん。・・・・・・うん! それ、ぼくだよ! 葵くん、よくここに来てくれてたんだよ!」  葵が思い出してくれた。その事実が嬉しくてはしゃぐようにそう答えた。 「やっぱか。・・・・・・だからお前、俺のこと知ってたの?」 「うん。いつからか、来てくれなくなって、すごく寂しくて・・・・・・。久しぶりに葵くんのこと見つけたら、ぼくのこと見えなくなってるし・・・・・・」  人とはそういうもので、足げく通ってくれていた人がいつしか来なくなって、その人の記憶から神社の記憶すら薄れてしまうことも少なくはない。そうして、ウタのなかから消えていく人々の想いに触れるたび寂しい思いをしてきた。
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