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「あの頃、・・・・・・俺の家で色々あって、ばあちゃんのこととか・・・・・・辛いことも多かったから、必然的に思い出さないようにしてたんだろうな。そうしてたら、本当に忘れてしまったことも多かったんだろうな」 「葵くんも、寂しい思いをたくさんしたんだよね。ぼく、力になりたかったのに、何もできなかった」 「そんなことねぇよ。・・・・・・じいちゃんのこと、本当に感謝してる。ばあちゃんの時も、喧嘩したまま話もできなくなって後悔してたのに、また同じこと繰り返すところだった。でも、ウタのおかげで、ちゃんと話ができたから」  葵は話しながら悲しげではなく、懐かしむような表情をしている。そのことに少しホッとしたウタは、そっと葵の隣に並ぶ。 「こうして前が向けたのも、ウタのおかげだ」 「そんなことないよ」 「もう少し、人とも関わっていこうと思う」 「葵くんを大切に思ってる人は、きっといるし、これからだって増えていくよ」 「・・・・・・お前にそう言われると、本当にそうかもって思うよ」  ウタの言葉を、葵は素直に受け入れてくれる。本来、葵はこういう人なのだ。心を閉ざす家庭環境のせいで頑なになってしまっていただけ。  でも、素直すぎる葵は、ウタに対しても真っ直ぐで少し気恥ずかしい。  恋人、というのはこういうものなのだろうか。 「ウタ、ありがとな」  そう言って笑った葵は、とても清々しい表情をしていた。
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