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「ウタちゃん」 「あ、泉くん」  境内を歩いていると、弾むような声に顔を向ける。泉がヒラヒラと手を振っていた。 「こんにちは」 「今日はコスプレデーなの?」 「えっ、あ!」  ハッとすると、そういえばウタは神の姿のままだった。泉は以前から、その姿のウタも見えているようだったのだ。素質のある人なのだろう。 「あはは」  コスプレだと思っているのは好都合ではあるが、人が来ないうちにどうにかしなければ、もし参拝者が来れば、泉が一人で話しているように側からは見えてしまう。 「葵と、くっついたんだって」 「え・・・・・・っ」 「残念だなぁ。結構本気だったのに」 「え、あの・・・・・・」 「俺のだ、つって牽制された。あんな葵、初めて見たぜ」  そう言って残念だと笑う泉は、それでもどこか嬉しそうだった。
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