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「楽しめたか」  一通り見終え、そろそろ神社に戻らないといけない。水族館を後にしたウタと葵は駅に向かって歩いていた。 「すごく・・・・・・すごく・・・・・・楽しかった」 「そっか。まぁ見ててわかったけど」  ウタの様子を思い出したのは吹き出す葵。  ウタは恥ずかしく思いながらも、水族館でのことを思い返すと自然と笑みが浮かぶ。とても楽しかった。こんなに心が弾んだのは初めてだ。 「いいな・・・・・・人って、こんなに楽しいことがたくさんあるんだ」 「楽しいことばっかでもないけどな。なんでもできるわけでもないし」 「あ・・・・・・、お金・・・・・・。あの、ぼくのお金も払ってもらって、ごめんね」 「ああ、別にそんなこと気にしなくていい」  ウタはお金を持っていない。人からもらった賽銭は多くはないし、それは神社の修繕などに使う。ウタの個人的なことに使うことはできない。  だから、今日のお金も全て葵が出してくれた。葵だって、多くのお金を持っているわけではないだろうに。
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