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残念に思うウタだったが、その子どもは次の日にもやってきた。
今度こそ、チャンスを逃したくないと、手拭いでほっかむりをして耳を隠し、尻尾だけは安定しない力で隠した。
「こ、こんにちは!」
勇気を出して声をかけたが、そこで人間には自分の姿は見えないかもしれないことを思い出した。まだ力の弱いウタには人に姿を表す術はできないのだ。
「なんだ、子どもいたんだな!」
しかし、ウタの心配をよそにその子どもはウタの姿を見ると嬉しそうに笑った。
「じいちゃんち、なにもなくて暇でさー。出てきたんだけど、何もないし、誰もいねぇし。つまんなかったんだよ。お前、ここら辺に住んでんの?」
ウタの姿を見るや否や一気に捲し立てるように話され、これまで話し相手のいなかったウタはどう返していいのかわからず圧倒されてしまった。
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