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 人間の強さを、ウタは目の当たりにしている。へこたれて、傷ついて、どん底に落ちても、這い上がる強さ。生きている、その力強さ。 「すごいな、人間って」 「ん?」 「前を向いて生きていく。成長していく人間って、すごくかっこいい」  羨望の眼差しで葵を見る。どうしてだろう。これまでこんなふうに思ったことなんてなかったのに。 「ぼくも、人に生まれたかったな」 「ウタ・・・・・・?」  そうすれば、葵と共に年を重ねていけたのに。  人間と神では、いつか葵だけが年老いて、いつかはウタを残して死んでしまう。  ウタは、また一人ぼっちだ。  それが、寂しい。悲しい。苦しい。  羨ましい。人が。こんな素晴らしい世界で生きている人が。
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