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「ぼくも人間に生まれたかったな」
そう言ったウタはとても寂しそうだった。何かの思いに耽っているような。
葵にとってウタが神であることは大した問題ではなかった。ウタを好きになり、一緒にいられることがただただ幸せに感じていた。
だが、人間である葵はきっとウタをおいていく。今はよくとも、確実に葵は歳を取り、いつかはウタを置いて死んでいくのだろう。
これまで神として人と違う時間を生きてきたウタの方が、その現実は辛く悲しいものかもしれない。
遺されることを思うと、それは、悲しいことだ。寂しい思いもあるだろう。
これから先、歳を重ね、時間を共にし、互いの想いが積み重なっていけばいくほど。
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