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「其方の願いに、ウタが神として応えただけのこと」 「俺の、願い・・・・・・」 「かつて、其方がウタに自分のことを好きでいろと願ったのだろう」 「そんな、俺は・・・・・・」  テンに指摘され、記憶を辿る。ずっと忘れていた、きっと、辛い過去から目を逸らしたくて忘れていた記憶。  その記憶の中に、確かにあった。  誰も自分のことを好きじゃないと、泣いた葵に、ウタが言ったのだ。神に頼んでみればいいと。  そうだ。確かに自分は神に祈った。やけになって。  その願いを叶えるために、ウタは・・・・・・。 「思い出したか。ならば、わかっただろう。本来神は愛など知らぬ。人間とは違うのだ」 「そんな・・・・・・」 「ウタを早く解放しろ」  テンはそう言って消えた。
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