10

5/15
前へ
/161ページ
次へ
 葵は暫くそこに立ちすくんでいた。自分はそんなにも昔から、ウタのことを縛り付けていたのか。そしてウタが、自分を好きだと言ってくれているあの気持ちは、葵の願いを叶えようとする神様としての責任からだったのか。  そんなのあんまりだ。ウタがかわいそうだ。  神として、小さくとも温かなこの神社を守ろうとしている。そんなウタの足枷になっている。自分は何も知らず、知らず知らずのうちにウタを縛り付け苦しめていたのかも知れない。  その結果が、あの祖父の時の出来事だ。  これ以上、ウタの立場を悪くするわけにはいかない。  人と神とは共存することはできない。許されていない。あのテンが忠告に来たのだ。もしかすれば罰が下るのかも知れない。そんなのは嫌だ。  ウタを、解放してやらなければ。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

271人が本棚に入れています
本棚に追加