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「ウタ・・・・・・」  ああ。でも。こうして顔を合わせてしまうと、決心が鈍ってしまう。ウタが愛しくてたまらない。  今すぐに抱き寄せて、その唇を塞いで。苦しくなるくらい互いを求め合いたい。 「なんでそんなこと・・・・・・、ぼくから葵くんの記憶を消すなんて・・・・・・」 「でも・・・・・・。聞いたんだ。ウタが俺のことを好きだって言ってるのは、俺が子どもの頃そう願ったからだって。俺も、思い出した」 「違う・・・・・・。違うよ!」  ウタが声を張って否定する。首を大きく横に振り、涙がキラキラと散る様がとても綺麗だ。 「葵くんが祈ったからぼくは葵くんを好きになったんじゃない! ぼくが葵くんを好きだったから、ずっと一緒にいたかったから。葵くんに祈ってもらったの! あの時、葵くんに神様にお願いしてって言ったのは、ぼくだよ」 「ウタ・・・・・・。でも、人と神様は、共存しちゃいけないんだろ」  例え、本当にそうだとしても。神の理に背くことは、ウタが神として生きづらくなるってことなんじゃないのか。
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