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「葵くんを、特別に思うことが神として失格だっていうなら・・・・・・、ぼくは神様をやめる!」 「バカ言うなよ! お前に願いを託してる人たちがいるだろ!」  俺だけのために、そんなこと許されるわけない。 「葵くんは・・・・・・、いいの? ぼくが、葵くんを忘れてしまってもいいの?」 「いいわけないだろ!」  思わずウタの腕を掴み叫んでいた。覚悟を決めてきたはずなのに。 「ウタが好きだ。こんなにも、誰かを好きになったの、初めてなんだ。ウタ以外にそんなふうに思える人にこの先出会えるわけない。ウタと一緒にいたいよ」 「ぼくだって。こんな風に、特別に思う気持ち、初めて。葵くんが、初めて。ぼくは神様で、人間ではないけど、そんな気持ちを持てたこと、すごく幸せなの。失くしたくないよ。葵くんと、一緒にいたい」  離れられるはずがない。こんなにも愛してる。こんなにも愛しい。葵はウタの腕を掴み、神社を後にした。
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