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「え、と。うん。ここ住んでる」 「ここ? お前、神社の子どもなのか?」  その少年は神主の子どもなのかと問いたかったようだが、ウタには理解できずよくわからず頷いた。自分がどこの子どもであるかは大した問題ではなかったから。 「君は? ぼく、ウタ」 「俺は黒尾葵。葵でいいぞ」 「葵。おじいちゃんちにいるの?」 「夏休みの間、父ちゃんに連れられて遊びに来てるんだ。田舎でなんもないから、俺は嫌なんだけど」  本来の家は別の場所にあるのか。ウタは、その日からやってくる葵と神社で他愛のない話をして過ごした。  子どもとは波長が合いやすいのか、人ならざるものを認識してしまうものがいる。葵もその類の人間だろう。多くのものは成長につれ、見えなくなっていくものだが、葵もそうだろうか。いつか、ウタのことが見えなくなってしまうだろうか。そんな不安がよぎるくらいに、ウタにとって葵は特別な存在になっていた。
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