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自分の身体が自分のものじゃないような感覚。あれが、人が人と愛し合う行為なのだ。
「ウタさま、どうかされましたか?」
「えっ、あ、なんでもないよ!」
ついうっかりぼんやりとしていたウタを気にして、ヤトが声をかける。心配をかけてはいけない。
「表を掃いてきます」
「ありがとう」
走り出すヤトの背中を見送りながら、ウタは考える。
葵とずっと一緒にいたい。身体を重ねたことで、強くそう思った。
神と人。共存する事はできない。ウタはある程度姿が育てば、見た目が変わらず、人の祈りがある限り生き続けるウタと、人として老いていき、いつかは命が尽きる葵。
変わらないウタと、変わっていく葵に、いつか苦しくなることもあるのかもしれない。
いつか来る別れと、葵のいなくなった世界を想うとそれはどれほどの絶望と悲しみなのか。
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