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「ーー本当に、後悔しないのか」
風が吹き背後から聞こえた声に振り返る。
「テンさま」
「あの男を選び、後悔しないか」
「後悔など、しません。葵くんがぼくに、人の感じるたくさんの気持ちを教えてくれたんです。そのおかげで、ぼくは人々の悩みや祈りをもっと身近に感じられるようになった。神としても、成長できたって思います」
人の悲しみや、人が人を思う気持ち。喜び、苦しみ、怒り、さまざまな感情を、想像し、同じ目線に立ちたいと。人の気持ちを知りたいと思うようになったのは、葵と出会ったからだ。
「葵くんがいなければ、今のこの神社はありえませんでした」
少しずつ増えてきた参拝者。葵は、ウタが親身になって願いを叶えてきたからだと言ったが、葵の大学の友人が来てくれているのは、葵がウタが倒れた時に声をかけてくれたからで、その人たちはそれをきっかけに、今でも頻繁に足を運んでくれている。
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