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しかし、夏休みの間遊びに来ていると言っていた葵は、自分の家に帰ると呆気なくいなくなってしまった。
この場所から動けないウタにはどうすることもできず、また一人で滅多に来ない参拝者を待つ日々が続いた。
次の夏、また葵はやってきた。神社にやってきた葵の前に姿を表すと、まだ葵にウタの姿は見えていた。嬉しくて、たくさんの話をした。会えなかった一年分、時間はいくらあっても足りなかった。
「もう帰るの・・・・・・?」
「日が暮れる前に帰ってこいって言われてるから。また明日来るよ」
「うん・・・・・・」
「じゃあさ、じいちゃんち来るか? 夜ご飯一緒に食おうぜ!」
もっと一緒にいたくて引き留めたウタに嫌な顔ひとつせずそう提案してくれた。しかし、ウタはこの場所を動くことはできない。
もう少し力がつけば、行動できる範囲は広がるが、この神社の神であるウタはここを不在にするわけにはいかなかった。
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