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葵の幸せを、ウタが阻むことはできないのだ。
「そして、このことは、ウタの心にだけ秘めておくこと」
「葵くんには、言ってはダメということですか?」
「そうだ。その上で、互いの愛が本当であることを証明して見せろ」
簡単に、許してくれるつもりはない。神の力を与えると言うことは、そう簡単なことではない。
それでもいい。このさきずっと、葵といられる可能性ができるなら。絶対的な別れが待っているより、ずっといい。
「それで、いいです。ありがとうございます」
チャンスをもらえる。それだけで十分。
神と人、それはきっと許されざる関係で。咎められても仕方がなかった。ウタにはいつも優しいテンだけれど、テンは神を統べる責任がある。ウタのわがままを全て聞いてはくれないかもしれない。そう思っていた。
それでも、チャンスをもらえた。十分だ。この先の未来のことは神であるウタにもわからない。二人の気持ちがどう変わっていくのかなんて、わからない。
それでも、許される限り、葵の側にいたいとウタは願うのだった。
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