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葵が、神であるウタに願ってくれれば、その願いを叶えるため力を使える。拝殿に向かい、手を合わせてくれれば、どうして泣いているのか言わずともその心の内が見えるのに。
でも。葵は神様を頼ってきたわけではない。ただ、ウタの元に来てくれたのだということも、人間の心の機微に触れてきて気づくことができた。
葵がウタに求めているのは、神としての助けではなく、友人であるウタの助けなのだ。
ならばどうすればいいのだろう。そこまでは理解することができるのに、どうすればいいのかわからなかった。
「葵・・・・・・」
泣きじゃくる葵の名を、頼りなく呼びかけるしかできなかった。
しばらく泣いていた葵が、ようやく顔をあげ、涙でぐしゃぐしゃの顔でしゃくり上げながら言った。
「誰も、俺のことなんかいらないんだ。俺なんか、好きじゃないんだ」
それはひどく悲しい叫びだった。
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