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すらっと長い足、程よくついた筋肉。綺麗な黒髪は綺麗な顔を程よく隠しているが、優しいその瞳はよく見える。
しかし、その優しさは淡々とした表情の中に身を潜めてしまっている。
「はうぁー、今日も素敵だ」
鳥居の柱に抱きつきながらウタはうっとりとつぶやく。しかし、葵はウタに気づくことなく行ってしまった。
ウタの姿は普通の人間には見えない。勘のいい人間には見えることはあるが、人間に姿を見せるには、力を使う他ない。
「ウタさま。またあの人間ですか」
遠ざかる背中をいつまでも見つめていると呆れたような声が飛んでくる。
「ミト。・・・・・・ごめんね。ぼくも掃除するよ」
「ウタさまはそのようなことなさらなくていいんです。私がしっかりお勤めさせていただきます!」
胸を張るのは、ウタの使いとして側仕えをしているミトだ。ミトは双子の女の子で、もう一人双子の男の子のヤトがいる。ヤトはきっと、拝殿の中を綺麗にしてくれているんだろう。
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