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「ミト、大丈夫だから、社の掃除をお願いしてもいい?」 「・・・・・・はい」  ウタに言われ、シュンと肩を落としながら去っていく。心配してくれているのは分かっている。すぐ人に少ない力を分け与えてしまうウタのことを。 「葵くんは、大学終わったの?」 「・・・・・・ああ」 「大学ってところは、楽しい? 人は、一生懸命勉強してその大学ってところを目指すんでしょ」  あまりウタの神社に学業祈願をしにくる若者はいないが、全くないわけではない。大学に合格しますように。そんな願いをいくつか聞いたことがある。 「目指す目的なんて色々だけどな」 「人間の一生は、あっという間だからね。その間にぎゅっと凝縮されてる。だから、儚くて美しいのかな」 「・・・・・・あんたにとっては、そう見えるのか」  ウタはまだ、神として生まれてそう長くはないが、神は、人に忘れ去られない限りあり続ける。だから、確実に終わりのある人とは少し違う。歴史のある神は、幾度も人の一生を見つめ、変わりゆく歴史を見守ってきた。  ウタもまた、これからたくさんの人間の誕生から死までを見守り、見送っていくのだ。
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