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「じゃあ、なにがわからなかった?」
「わからなかったとかじゃなくて。なんで」
「なんで?」
「俺を好きって、なんでだって」
「葵くん、優しいところが好き」
ウタはずっとこの神社で一人きりだった。あの頃は、ヤトやミトもおらず、一人きり。
そんなウタを、人と思っていたのだろうけれど、暇潰しの相手にでも選んでくれて、毎日会いに来てくれた。名前を呼んでくれ楽しい話を聞かせてくれた。その優しさを忘れられない。ずっと、ずっと、あの時間が続けばいいと思うほど。
その願いは、叶わなかったけれど、こうしてまた再会することができた。
「なにをどうみたら俺が優しいになるんだよ」
「本当だよ。葵くんは、すごく優しいんだよ。葵くん、知らないの?」
「バカじゃねぇの」
葵がどうして変わってしまったのかわからない。それでも、葵の優しさは本当で、消えてしまったわけではないはずだ。
バカバカしい、そう言って葵は帰ってしまった。
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