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「ごめんなさい・・・・・・」 「別に咎めているわけではない。下手に神の存在が知れ渡ることは良しとはできないが。ウタが信用に足ると感じたのだろう。我はウタを信じておるからな」  テンはとてもウタのことを気にかけてくれている。小さな神社の神であるウタにとって、テンの存在は本当に、天と地ほどの差がある。目を見て話すことすら憚られるというものだ。 「だが、ゆめゆめ忘れるでない。神が侵してはいけない領域を見誤るでないぞ」 「・・・・・・はい」  神とは万能ではない。願いを願いの通りに聞き届けることはできない。特に命を左右する願いは、慎重にならなければならない。  そして、なにより。  死んだ人間を生き返らせてはならない。  運命を曲げてまで叶えてはならない願いもある。テンに渾々と伝えられてきたことだ。  ウタが参拝者に親身になり過ぎてしまう性格であることを知っているからだろう。だから、いつもウタはテンの言葉を思い出し、肝に銘じる。  自分は神だからといって、なんでもできるわけではないのだ、と。
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