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「人は、神に祈るだけで心が救われるものだ。心苦しい時、思い悩んだ時、なにかに、縋りたくなるのが人間なのだ。それに寄り添い、願いを聞き届けるだけでも神の存在する意義はある」
「はい」
「よぉく、覚えておけよ」
言い聞かせるようにそういうと、ニカっと笑って今度は正面からウタを抱き寄せる。
大きな胸に埋もれ、息苦しい。
「て、テンさま・・・・・・っ!」
「ははっ! じゃあな!」
高らかに笑い、テンは颯爽と消えていった。嵐のような人だ。いつもそうだ。急に現れ、自分の思うままに行動してさっさと帰っていく。
それでも、どこか落ち着く雰囲気を持っているテンのことをウタは心地よく感じていた。
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