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「あっ、大丈夫ですか!」
拝殿からいつものように参拝者が来るのを待っていると、歩いてきた老人がよろめいて倒れてしまった。ウタはすぐに人型に変身し、駆け寄る。
「おお、ありがとうね」
「いえ。お怪我はありませんか」
「大丈夫だよ。この年になると、身体が思うようにならなくていけないねぇ」
困ったように笑うおじいさんを支えながら起き上がらせる。
「別嬪さんだねぇ」
「べっぴん?」
「綺麗な子じゃ」
おじいさんを連れ、拝殿までやってくる。
「お参りですか」
「そうじゃ。ここに神社があったなんて、近くに住んどるのに知らなんだ」
「小さい神社ですから」
ウタにとっては居心地のいい場所ではあるが、人間にとってはやはり大きい知名度の高い神社の方が信頼できるのだろう。
それでも、ここを選んでくれた人には、精一杯向き合いたいと願う。
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