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「詳しく聞いてもいいですか?」 「あの子の両親の関係が悪くなり、喧嘩が絶えなくてな。ついに、葵が八つの頃離婚することになったんだ。もうその頃には、取り返しがつかないほどに破綻していた。もっと早くにわしが気づいてやれたらよかったのだが、葵の前でもかなりひどい喧嘩をしていたらしい。葵にも酷く当たっていたようでね」  初めて聞かされる葵の過去。自分は神なのに、なにも知らなかった。神は万能ではない。無条件に全てを把握できるわけではない。わかっているのに、大切だと思っていたはずの葵のことをなにも知らなかった事実に胸を痛めた。 「時を同じくして、ばあさんが・・・・・・、あの子にとっての祖母、わしの妻じゃが、が倒れてそのまま死んでしまったんじゃ。それも、発見したのが葵でなぁ・・・・・・。いろんなことが一気に起きて子どもには酷く残酷だっただろう。それまで、明るく笑顔の絶えなかった葵から笑顔が消え、人と壁を作るようになってしもうた」 「そんな・・・・・・」 「そうなっても尚、見苦しい喧嘩の絶えない息子たちから葵を引き取り、わしが面倒を見ていたのだが・・・・・・、それも本当に良かったのかと悩んでいるところだ」  そういって自虐的に笑うと泣いているウタにそっとハンカチを差し出した。
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