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「じいちゃん、なんて」
「え?」
「なんか言ってたかって」
「祈願に関することは、お教えできません」
「・・・・・・は? じゃなくて。って、お前、そういうの聞こえるわけ?」
驚いた様子の葵に、不思議に思い首を傾げる。何かおかしなことを言っただろうか。
「聞こえなければ聞き届けることはできませんよ」
「いや、それはそうだろうが・・・・・・。今、俺が考えてることもわかんの?」
「まさか。拝殿に向かい、参拝してくださらなければわかりませんよ。そこまで万能ではありません」
ウタにとって当然のことだが、人間の葵にとっては驚き以外の何者でもないんだろう。
「ですから、葵くんも拝殿に向かって祈願してください。葵くんの願い、ぼくが叶えてさしあげますから」
「断る。別に、願いなんてねぇよ」
キッパリとそう言われてしまった。現にこれまで、葵は神社の中には足を踏み入れてくれるようになったが、一度も拝殿に向かい祈願することはなかった。
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