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「ウタさま、あまり一人のものにお力を使いすぎませんように」  母親が去った後、拝殿の中へ入るウタに、そう指摘するのがヤトだ。ミトによく似た見た目だが、やはり男の子でミトの顔を少しきつめにしたのがヤトだ。 「うん。でもあのお母さん、とても心配しているみたいだから、少しでも力になりたい」  そうでなくとも、数少ないウタを頼ってくれる人間なのだ。願いを込めてくれる人間の存在はとても大きい。自分の存在意義を認められている。求められているということだ。  神は人の祈りから生まれるという。人間に忘れ去られた神はその存在意義をなくし、力を失い消えてしまう。  力を使い果たし、ウタが消えてしまうことを危惧しているのだ。 「心配してくれてありがとう。ちゃんと限度は考えるから」 「ですが・・・・・・。ウタさまは、一人の人間に思い入れを持ちすぎる」  ヤトは表情を歪ませ不満そうだ。そんなヤトの頭をくしゃっと撫でつけて笑顔を向けた。
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