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「あ、もう来たのかよ、葵」
「葵くん!?」
目の前の彼に声をかけたのはまさかの葵だった。葵の知り合いなんだろうか。
「お前、なにやってんの」
「大学の奴らが、最近学校帰りにこの神社に入って行くのを見るって噂になってたから、誰かと密会してんのかなーって。葵が来る前に確かめようと思ってたのに」
「はあ?」
「お前、イケメンクールキャラで、人気あるの無自覚だろ」
葵の大学の知り合いなんだろうか。もしかしなくとも、友だちというものだろうか。そうか。葵にも、友だちができたのか。あの頃は、こっちに友だちがいないのだと毎日ここに通ってきていたが。
「バカじゃねぇの」
「で、密会相手は?」
「知るか。いねぇよ、そんなん」
「冷たいねぇ。女たちはなにがいいんだか。今度、俺に鞍替えしないかって言ってみよー」
葵と彼は、随分とタイプの違う人間のようだ。冷たく遇らう葵にめげることなく話し続ける泉と呼ばれた男。
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