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 その日から、泉という彼はしょっちゅう神社にやってきた。一人でや、時には葵に引っ付いて。その度に、慌てて人型をとり姿を見せると、しばらく楽しそうに話をして帰っていく。 「最近、ケモ耳コスプレはやめちゃったの?」 「あ・・・・・・はい」 「残念だなぁ。可愛かったのに」 「はは・・・・・・」 「お前みたいな変質者がいるからだろ」  呆れたように言う葵に、泉はえー、と不服そうだ。  泉は、フルネームを(いずみ)優吾(ゆうご)と言うらしい。 「泉さんは、参拝はいいですか」 「俺? 俺、悩みないんだよねー」 「悩みがなくともいいんですよ。ただ、挨拶をしてくださるだけでも、神は嬉しいものです」 「そうなの? 自称神様はよく知ってるね」  泉はにこやかにそう言う。自称ではないのだけど・・・・・・と思いながら、信じられないのも仕方ない。
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