14/15
前へ
/161ページ
次へ
「ありがとな」  あっという間に時間は過ぎ、葵に神社まで送ると言われ夜道を歩いていると、ボソリと葵が呟いた。  ウタはそのお礼の意味がわからず首を傾げる。 「じいちゃんのあんな楽しそうな姿、久しぶりに見た」 「お祖父様、とても優しくて素敵な人ですね」 「結構頑固なところあるけどな」 「葵くんも、お祖父様のこと大好きなんですね」  ウタの言葉に、葵は眉を寄せたが否定はしなかった。 「じいちゃんは・・・・・・、俺の唯一の家族だからな」  葵は聞こえるか聞こえないかの小さな声で囁いた。静かな夜にその声は、ウタにも届いてしまった。  折り合いが悪く離婚してしまったという両親。二人を見かねておじいさんが引き取ったというのだから、きっと押し付けあっていたのだろう。  人間の抱く感情の全てを人間ではないウタは理解することができない。  子をなし、そして育てそうして人は循環していく。人の願いから生まれる神は子ど産む孕むことはないし、子育てなどしない。  
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

271人が本棚に入れています
本棚に追加