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 だから、自分のお腹を痛めて産んだ子どもを押しつけあう人の気持ちなど理解できない。  あの日、誰も自分のことを好きじゃないのだと泣いた葵の気持ちも、きっと全てわかってはあげられていないのだろう。 「お祖父様も、葵くんのことをとても愛して大切にしているのが伝わってきた。葵くんは、とても幸せですね」 「・・・・・・」 「ぼくも、お祖父様に負けないくらい葵くんのことが大好きだよ」 「お前のそれは、ほんと、なんなんだよ」  うんざりした顔の葵に、にっこりと笑って返す。 「葵くんは、たくさんの人に愛されてる。神様のぼくが言うんだから間違いないよ。だから、安心して」 「そうかよ」 「そうだよ」  きっと、他にだって葵を大切に思う人はいるはずだ。泉だって言っていた。葵は大学で人気があるのだと。  葵は優しい人だ。優しい人には優しい人が集うものだ。きっと、葵自身が気づいていないだけで。
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