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少しでも、せっかくウタを頼りに来てくれた人の役に立ちたい。そう思いながらも、多くの信者を抱えているわけではないウタには大きな力はない。
とはいえ、多くの信者が訪れる大きな神社の神は、その多くの人の願いを聞き届けなければならない。一人一人に心を割く時間はない。
ならばどちらがいいかを考える。来てくれる人は少なくても、一人一人に心を割ける方がいい。ウタはそう思った。
「お疲れさまです」
拝殿の奥、ウタが来訪者の願いを聞き届けるための部屋があり、そこでウタは力を使う。その部屋から出てきたウタをヤトが迎えそう声をかけてくれる。
「うん。ありがとう」
「尾がでています。またお力を使いすぎたのでは」
「ヤトは騙せないね。でも、大丈夫。少し休めばこれくらい平気だよ」
ウタが尻尾を出したままでいることを目敏く気づくヤトに苦笑が漏れる。
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