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「葵くん、ぼく、わかったんです!」 「・・・・・・は?」 「ぼくが葵くんを好きな好きは、特別な好きだって」  気づいたことが嬉しくて、神社を訪れた葵に報告する。怪訝な顔がウタを見て、盛大なため息を吐かれた。 「お前って、なんでそうなの」 「そうって?」 「なんでそんな真っ直ぐ人を好きだとか言えるわけ」 「人の一生はあっという間だから。言いたいことを言わずにいたら、すぐに言えなくなってしまう」  人である葵と神であるウタとでは、時間の感覚も違うのかもしれない。ウタ自身、神として生きてきた時間はそれほど長くなく、人を見送った経験もそれほどありはしないのだが、神としての感覚は備わっているのかもしれない。深く考えたことはなかったが、どうしてなのだろうか。 「言いたいこと・・・・・・か」  ウタの言葉に葵はポツリと寂しげに呟いた。
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