9/16
前へ
/161ページ
次へ
 葵を送り出し、一人になったウタは葵の気持ちを思うと胸が痛んだ。たった一人の家族だと言っていた。 「あ・・・・・・」  ウタの瞳から一筋の涙が流れた。ウタの中から、一人の信者が消えた感覚がする。  全ての人間の死がわかるわけではない。しかし、神は人の願いによって生きている。だからこそ、自分に願いを託してくれる人のことはよくわかるのだ。  参拝者の少ないウタには特に、一人一人のことがよくわかる。それが、葵の祖父なら、余計に。  たった今、葵の祖父の命の灯火が消えてしまったーー。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

271人が本棚に入れています
本棚に追加