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 カラカラと引き戸に手をかけると、鍵はかかっておらずすんなりと開いた。 「葵くん・・・・・・」  チャイムを鳴らすと言う感覚のないウタは中へと進む。この間訪ねた時に一緒に食事をとった広間の扉を開くと、そこに香る線香の匂い。 「葵くん・・・・・・」  そこに、葵はいた。布団に寝かされたおじいさんの姿もある。葬儀まで、家に戻ってきたのだろう。 「お前・・・・・・なんで・・・・・・」 「ごめんなさい。・・・・・・葵くんが心配になって・・・・・・」 「俺・・・・・・? なんで・・・・・・。ああ、神様だから、じいちゃんが死んだって知ってたのか? それとも、こうなることも・・・・・・? だったら、なんで教えてくれなかったんだ・・・・・・」 「葵くん・・・・・・?」 「じいちゃんが、こうなること、知ってたのにお前はヘラヘラと俺に好きだとか調子いいこと言ってたのかよ!」  葵の怒号が飛ぶ。ウタはビクッと肩を震わせる。葵の悲しみが伝わってくる。
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