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 両親に捨てられた葵にとって、おじいさんだけが自分を愛してくれるたった一人の親族だったのだ。  明るく優しかった葵が、笑わず冷たい雰囲気を纏うようになるほど傷ついた心を、完全に閉ざさずにいられたのは、おじいさんがいたからだ。  ウタにも優しくしてくれたおじいさん。ウタだって、おじいさんのことは大好きだった。 「葵くん・・・・・・、お祖父様のこと、・・・・・・大好きだもんね」  大好きな葵が悲しむ姿は見たくない。神は特別を作ってはいけない。そういつだか天に言われたことがある。確かにそうだな。特別を作ってしまえば、その人の願いをなんとしてでも叶えてあげたいと思ってしまう。  神と、人との距離は近くてはいけなかったのだ。
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