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 それでも、大好きな葵のためなら。そう思い、縋る葵の手に触れる。 「葵くん、泣かないで。・・・・・・一つだけ、お願いがあるんだ」 「・・・・・・」 「神社にいる、ヤトとミトに伝言をお願いしてもいい? テンさまを頼りなさいって」  これまでずっとウタを支えて仕えてくれたふたり。きっとテンなら今後の身の振り方も考えてくれるはずだ。  人を生き返らせることは禁忌。そもそも、信者の多くないウタは元々力はそう多くない。おじいさんを助けることで全ての力を使い果たすだろう。もし、使い果たさずとも、禁忌を犯した罪で、天の裁きを受けることになる。神としての力を奪われ、神として生まれ変わることも叶わない。 「それから・・・・・・、葵くん、ぼくのこと忘れないでね」  大好き。そう告げると、ウタは立ち上がり、布団に寝かされているおじいさんの元に近づいた。
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