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ウタは慌てて境内に出る。そこには、確かに彼の姿があった。
真っ直ぐ拝殿の方へ行くのではなく、辺りを見渡し散策しているかのようだ。お詣りにきたわけではないのだろうか。
「ぼ、ぼく、行ってくる」
「え、ウタさま!」
いてもたってもいられなくなってウタは葵の前に飛び出した。
「こんにちは!」
思わずそう声をかけたウタだったが、葵は気づくことなくウタの前を通り過ぎていく。
そうだ。見えないのだ。境内の中は外よりも神秘な空気が漂うため、ウタの姿を映す者も増えるのだが、葵には影響がないようだった。
肩を落としたウタは、せっかくのチャンスだと、葵の目に映るため力を振り絞り人に姿を変えた。
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