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「・・・・・・あおい・・・・・・」  ウタが消えた場所を呆然と見ていると、か細い声が聞こえる。 「じいちゃん!?」  ハッとしてじいちゃんに駆け寄るが、じいちゃんの身体は冷たいまま、目を固く閉じていた。 「葵・・・・・・ウタちゃんを・・・・・・葵を大切にしてくれる人を、葵も大切にしないといけないよ」  しかし、じいちゃんの声が確かに聞こえてくる。口は動いていない。思念が直接耳に入り込んでくるようだ。これは、ウタの力のせいなのか。 「あんないい子・・・・・・他にいない・・・・・・」 「じいちゃん・・・・・・、じいちゃん! 俺、俺、じいちゃんに謝らないといけないことがあるんだ!」  葵の声も届くのだろうか。葵は必死に叫んだ。ずっと、ずっと、胸の中に秘めていた思い。後悔の過去。 「俺・・・・・・、ばあちゃんが倒れた時・・・・・・、ばあちゃんと喧嘩して、ばあちゃんにひどいこと言って家飛び出したんだ。・・・・・・俺があの時、喧嘩なんかして飛び出さなかったら、ばあちゃんのこと、もっと早く気づいてやれた。・・・・・・俺が・・・・・・俺のせいで・・・・・・」 「そんなこと・・・・・・誰も責めてはいない。あれは、葵のせいじゃない。ばあさんだって、怒ってなんていないさ。心配なら、じいちゃんが伝えておいてやる。だからもう・・・・・・気に止むことはない」 「じいちゃん・・・・・・」  涙が溢れてくる。縋るようにじいちゃんの身体に被さる。あとどれくらい時間は残されているだろう。何が伝えられるだろう。
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