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「じいちゃん・・・・・・、俺、じいちゃんのこと、好きだよ。・・・・・・俺のことずっと育ててくれたこと・・・・・・本当に感謝してるんだ・・・・・・。気恥ずかしくて、言えなかったけど・・・・・・」 「わかっているよ。・・・・・・葵はとても優しい子だ・・・・・・。葵、もう葵を大切にしない過去は捨ててしまいなさい。葵を今、大切にしてくれる人をきちんと見て、信じなさい。お前は、愛されているよ・・・・・・」 「でも・・・・・・俺を一番愛してくれたじいちゃんは・・・・・・いなくなるんだろ・・・・・・」 「いなくなんてならない。ずっと見ている。ばあさんと一緒に、ずっと見ているからね」  その声を最後に、じいちゃんの声は聞こえなくなってしまった。  暫く縋るように泣いて落ち着くと、少しだけ胸がスッキリとしていることに気づいた。 ーー人の一生はあっという間だから。言いたいことを言わずにいたら、すぐに言えなくなってしまう  ウタが言っていた言葉を思い出した。じいちゃんに言いたかったことを、ずっと言えずにいたことを言えた。そのことが、少しばかり葵の心を晴らしてくれた。
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