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 葵は一番に、大学で泉に声をかけた。泉は人当たりもよく、友人も多い。協力が得られればかなり力になるはずだ。 「泉、頼みがある」 「え? 葵が、俺に? なになに」  泉は、葵から声をかけられたことが物珍しいようで目を輝かせながら詰め寄ってきた。 「知り合い集めて、神社に参拝してくれないか」 「神社って、ウタちゃんの?」 「・・・・・・ああ」 「いいけど・・・・・・、なんで? なんかあんの?」  すんなりと了承した泉だったが、やはり理由は気になるようだ。しかし、本当のことは言えるはずもない。信じもしないだろうが。 「最近参拝者が少なくて、困ってるらしいんだ」 「へぇ。神社も、大変なんだな」 「ああ・・・・・・、だから、頼めるか」 「いいぜ。一人千円入れろっつっとくわ」 「そこまでしなくていいよ」  人の願いが力になると言っていた。必要なのはお金ではなく、多くの人がウタの神社に訪れることなんだろう。  人の願いによって生まれる神は、きっと人に忘れられると消えてしまうのだ。たくさんの人がその神を思い、頼ることで神は存在する。
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