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じゃあ、ついでに私も12
扉が開くと、私はマンションの外廊下へとユウカの手首を掴んだまま引っ張って連れ出す。
その間に彼は走って自室へ向かう為に、私たちに背を向けた。
良かった、これでやっと目的の部屋がどれなのか、やっと知ることが出来る。
私にまで暴言を吐き出したユウカを引きずって、彼の後ろについて行く。
見失うわけなどない、外廊下はずっと行き止まりまで真っ直ぐに続いているだけなのだから。
鍵を回す音、ギ、と、ドアが軋む。
ガン、と膝を上げて脚を伸ばし、彼が自分が中へ入る為だけに開けた狭い室内までのスペースを、ハイヒールのカカトで思いっきり蹴り上げて全開にする。
私はユウカの手首を離すと、巻いてあったスカーフを引き千切る勢いで先端へと向かって抜いた。
「やって来い、ユウカ!」
「ユキ、最後までありがとう、大好きだった、さようなら」
彼を玄関らしき場所に押し倒し、包丁の柄を握り締めた方の腕を勢い良く振り上げる、そんな彼女の姿は一等美しかった。
本当に絵になる、映画のワンシーンのように、けれどそれは誰にとってもどうでも良い日常に紛れて消えてしまう、移り変わって行く駅に貼られたポスターと同じだ。
じゃあ、私は覚えておこう、目に焼き付けておこう。
「叶えて見せて、私も夢を見て見たい」
バタン、とドアがその重みだけで自動的に閉まるまで、私はENDの文字を認めない。
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