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じゃあ、ついでに私も13
エンドロールはこれからはじまる。
事情聴取だとかなんだとか、葬式だか救急車だか部屋にいるかもしれない本カノの嘆きの声や、ヒステリックな女同士の争いだとか。
血まみれの惨劇だとか、もしくは何も起こらないだとか。
本番は、ここまでじゃないんだよ、ユウカ。
見たくないなら、自分が終わるしかない。
どのあらすじが一番適していようが、ドラマチックだろうが、なるようにしかならない。
物語の流れを自在に操ることが出来る人はここには誰一人いない。
感想もレビューも叩きも貶しも謂れのない噂話の尾ひれも、まだ何もついてない。
はじまってもいないし、終わってもいないし、取り上げられもしないかもしれない。
私は閉まったドアが中から開けられないように寄りかかると、バックの中から煙草とライターを取り出して、口に咥え火をつける。
あれもこれもそれもどれも全部。
こんなのは全部。
ガタン、ドン、ダン、とひとしきり籠ったように耳が拾い続けていた室内のBGMが止む。
しばらく、私の名を呼ぶユウカの声もなく、ドアが動く様子もなかった。
私はとりあえずは煙草を5本ほどゆっくりと吸って、自分の出番は最初からないけれど、それでも万が一もあり得るかもしれないし、と6本目を箱から取り出す。
ドアが、丁度火をつけたところで、内側からゆっくりとドアが開かれる。
ゴテゴテに飾り立てた長い煌びやかな爪は、ユウカのものではない。
ところどころ、その爪を持つ人物の指先には、見映えのするベタつく赤色が未だテラテラと光っていた。
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